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兄妹

ども。岩崎です。

雪が降ったりして都内は大変だけど、

この季節になると思い出すことがある。

今日はそんな拙いぼくの思い出話を一つ綴ってみようと思う。

よかったら読んでみてください。



ぼくには妹がいる。

岩崎愛

っていうやつなんだけど、兄と同じく、歌をうたう職業を選んでしまった、ぼくのただ一人の妹。

ぼくと愛は小さい頃から、些細な喧嘩もしたけどどちらかというと仲は良い方で

二人とも大阪の田舎ですくすく育ったんだ。

小さい頃はよくぼくに引っ付いて遊びにいったりもしたけど

成長するにつれ、各々の友達と連れ合うことが多くなった。

それでも色んなことがあって彼女は苦しんだし

ぼくも彼女も心の底から人を憎むこともあった。

そんなことがあったから、と言ってはおかしな話ではあるが

ぼくは妹のことをたった一人の兄妹として大切に思うようになった。


時は経って


気がつけばぼくは学校を辞めて、働き始めて

今も続けている音楽の道を進むことを選んだ。

その当時、愛はまだ小学校6年生で

一人でギターの練習をするのが寂しかったぼくは

兄の特権をフルに使って嫌がる愛にむりやりギターを教えたりして、

4つ年の離れている別性の兄妹にしては

笑い合う時間が多かったのではないかと記憶している。

それでも愛はむりやり教えられることがイヤになったのだろう

愛にプレゼントしたギターはいつの間にか部屋のオブジェになる毎日が続くようになって、

気づけば彼女は自分の友達と遊ぶことをプライオリティの上位として選択したようだった。

それでもいいやと、ぼくはぼくの時間を過ごし、愛は愛の時間を過ごした。

そうなってしまえば思春期まっただ中のぼくと、

まだまだ幼い愛の距離は離れていくばかりだった。

そんな生活が何年か続いて、

ぼくがセカイイチというバンドを始めた頃だった。

気まぐれかなんなのかわからないが

すっかり埃まみれだったギターを再び手にした愛は

前よりも弾いてる時間を楽しんでいるようにも思えた。

でも、昔から愛は日々の生活にどこか冷めた目を持つ少女だった。

そんな愛には珍しく、遅くまで待っていてくれたんだろうか

毎日朝から深夜までのバイト帰りでヘトヘトのぼくに、

彼女から悩みを打ち明けてくる夜があった。

思春期独特の焦燥感でいっぱいだった妹は打ち明けるやいなや泣いて泣いて

ぼくは困ってしまって、とりあえず酒を呑んで、トム・ウェイツをかけて、ゆっくり話を聞いて

彼女の言葉に耳を傾けた。

ああ、ついに愛にもこのときが来たんだなって思った。

一人の子供が大人になろうと、一つ目のさなぎを脱ぐ瞬間。

今でもその気持ちをありありと思い出せる。ぼくは目を閉じて大丈夫、と話し、

誰がなんと言おうとぼくはずっとお前の味方だって気持ちを伝えた。

ぶっちゃけてしまうとその気持ちは親を越え

恋人なんてはるか彼方のあたりで越えてしまって

ぼくはただ、『愛』という名前について考えていた。

彼女はきっと人やモノから自然に愛され、また愛すことのできる人なんだと

泣いている彼女を慰めながら、そのとき初めてぼくは知った。

その日は二人で一緒に寝て、まるで小さい頃に戻ったみたいだった。

翌日、彼女は学校に行き、ぼくはまた働いて音楽をやる、今まで通りの生活。



また時が経って



引っ越しの手続きも長年連れ添った悪友との別れも無事に終えたぼくは、

手短な荷造りと、手短な別れを用意して東京に旅立つときがきた。

友人や家族からの盛大なパーティが続き、

臓器のあたりが何やらかんばしくない旅立ちの朝に

妹は少々照れながら『電車の中で読んで』と、一枚の手紙を渡してくれて

ぼくも少々照れながらそれを受け取った。

それでも男の旅立ちというものは気持ちのいいもので、

これからの生活に胸を膨らませながら爽快な気分で電車に乗った。


一息ついてから、そうだ手紙、、、と思い出して

封筒を見たら『電車の中で読んでな。そして涙に浸りな。by愛ちんぐ』

と書いてあって、絶対泣くかと思ったのを憶えている。

手紙を読んでみるとそれは、今まで同じ屋根の下で育ったぼくと愛の

20年ほどのストーリーを垣間みることのできる、

妹から兄への感謝の気持ちを綴った内容だった。

文面は短い、それでも長い間読んでいたと思う。

彼女の使う『ありがとう』という言葉には情報がたくさん仕掛けられていて

いろんなことを思い出して、不覚にもぼくは泣いた。ような気がする。。

読む前に心に誓ったあれはなんだったのかと言うほどに泣いた。ような気がする。。


誰かからの感謝の気持ちは嬉しいけどすぐに過去になる。

でもあれから何年経っても、心に大雨が降っても

たった一人の妹からの感謝の気持ちがこもった

あの手紙はぼくにとってずっと宝物だ。


東京に来て約9年くらい。

ぼくはまだまだ冴えない。

だからこれからもよろしくな、妹よ。

by black-bird-fly | 2012-01-25 05:33 | 日々のたわごと